兇人邸の殺人

2023/09/26

 

つらい。辛すぎる。

いやーーーー面白かった。

建物の構造や状況設定も今までのと比にならないくらい凝ってて、凄い、の一言。

剛力京を「ケイ」や「生き残り」と思わせるミスリードもめちゃめちゃ良かった。

なんか、この作者さんの書きたいものが分かってきた気がする。剣崎と葉村の関係。うーん、言葉にしたいけどできない。1作目で「あなたのワトソンにはなれない」、2作目で「君のホームズにはなれない」、今回初めてお互いのホームズ、ワトソンをやろうってなった。今まで救えなかった人とか出会ってきた人とお互いに対する信頼感が関係を進ませたんだね。なんか、何も上手いこと言えない。誰でもわかる言えることしか書けん。

最後のシーンが最高すぎて…。剣崎を最後まで諦めない葉村、葉村を頼り切ることに躊躇する剣崎とその気持ちに気づいて助言する(「幸せや不幸を分かち合ってくれた方が何倍も幸せだった、彼を侮るな!」)剛力、自分が死んでからどういう結末になるか分からない中一縷の望みを託しそれが叶わなくても誰も責められることが無いよう何も言わず「何があっても剣崎さんを責めないで」とだけ残して最後の策に踏み切った裏井…。中の跳ね橋を落としたのもちゃんと必要があって、自分が鐘楼へ行くためと、死んだあとちゃんと首を首塚に持っていってもらえるようにするため。作者、頭良すぎないか?無理だこんなんなぜ思いつく。最後バリケードで唯一の剣崎の逃げルートを絶ったのも剣崎ならそうする、って思うしそれが最後、スマホを見て戻ってくると信じた剣崎と剣崎を諦めなかった葉村の信頼関係が無いと助けられなかった最後のシーンを作り出してるのすごい。

特に、最後に策を葉村に話さなかった裏井の扱いが最高。「最初から言えばすむ話じゃん」で読者に済まされることってけっこうあって、そこでつっかかりじゃあこのネタは無しだな…シーン自体は最高なんだけどなってなることわりとあるんだけど全てに納得がいく。素晴らしい。何より裏井も剛力も過去の自分のことがあって、相手の気持ちが痛いほどよくわかるからこそ出る言葉っていうのが良いんだよな…。

実験施設の話は7seedsの夏Aとか、約束のネバーランドとか、まさにそういう状況、雰囲気で読みやすかった。こういう、外の世界と断絶されて育てられる子供たちとか、実験施設とかは大の好物なので追憶読むのほんとに楽しかった。最後の追憶で「ケイ」視点が今、現在に重なる演出、すき、、。つらい。

 

総評:

前回よりさらに良かったかも。舞台とか雰囲気としては昔ながらのクローズドサークル感が強い前作の方が好きだけど構成とか演出とか館の内部設計とか登場人物の背景や想いとか、総合的な面で。でも前作のどんでん返しも好きなんだよなー。でも今回のはいちおう多数の人々を救う結果にできた、剣崎が葉村といたことで、信頼関係ができていたことで起こるはずだった最悪の事態を防ぐことができた、ていう悲しいけどハッピーエンドだったので終わり良かったな。やっぱ今回かな。

黒猫の目の色剛力と葉村くんで言ってること違うなって思ってアレキサンドライトは調べたのでこれゆすりに使うんだなってすぐわかった。あと第2の殺人のトリックは屍人荘の殺人と似てる。人外の力が無いと、それを知ったうえでの発想力が無いと解けない。でもちゃんと謎解きに必要な要素は出されているのでなるほどね~ってなって面白い。屍人荘の時から思ってるけど、特殊な能力とか人外とか出てきても「ちゃんとしたミステリ」として楽しめるのが良い。というかそうじゃなきゃ読まない。