魔眼のはこの殺人

2023/9/23

 

面白かった!前作よりかなり好き。

針が重なっている時に壊れた、ていうのは読んでて思いついたんだけど文字盤に着弾の跡が無い=時計には銃弾がいかなかった、てことは違うんだなと思ってその説は外してしまった。針だけ折って文字盤は無傷、なんてあるのか…?とちょっと思ったけどこういう、一見意味の無いように見える犯人の行為の中から手がかりを見つけるっていうのは大好きだからかなり楽しんで読めた。謎解きの途中、「死の予言」がサキミと十色の2種類あるからちょっとこんがらがっちゃった。

 

「男女2人ずつが死ぬ」っていう表現の絶妙さ…。これすごくいい。この表現によって皆おかしくなってる…。

以下自分の中で整理して納得した部分↓

最後の、ひるこが自分の生存確率を上げるために「自殺」したのだと気づくところ。

交換殺人をしない場合は初めから諍いは起きない。それぞれがノルマを果たすだけ。

実際には同性同士だと警戒が厚いため、交換殺人を行った。王寺は十色を殺したので

①葉村くんが「自殺」した場合は朱鷺野があと1人女を殺せば終わり。諍いは起こらない。

②ひる子が「自殺」した場合は朱鷺野は誰も殺さなくてよくなり、諍いが起こる。

 

「予言が本物だった場合時、俺を絶対に死なせないために、犯人が死ぬかもしれない選択をした!」(本部より抜粋)

 

これ、最初読んだとき葉村くんが犯人に殺される可能性を低くしたいんなら①の方が確実に葉村くんは助かるんじゃない?と思ったけど、「犯人に殺される」のを防ぐためじゃなくて、「予言の犠牲者になる」のを防ぐためってことね!!!!!!!葉村くんが「自殺」しても実際死んでないため男の中で絶対にあと1人犠牲者が出るけど犯人同士の諍いの中で犯人が死んでくれれば儲けもの、ということね。犯人に殺される以外にも災害とか事故とかで死ぬ可能性を無くすためね。パターンを全部紙に書いて整理して何回か読み返してやっとわかったよ…こういうことがわりとあって私の理解力、そんなに低いのかな…って自信無くなってくる。国語学年トップに入るくらいだったんだけど…。

 

最後。もう死人が出ることはないが、これはこの特殊な環境下(死の予言、クローズドサークル、2日間という時間制限)だからこその犯行であり、一歩外に出ればここでの猜疑心や恐怖など無くなり全て幻だったかのように思えてしまう。そして犯人は自分のやってきたことを無駄にしないためにもこの2日が終わるまでは決してこれ以上の殺人を犯すことはない。この2つを考え、だからこそ今犯人を明らかにしなければならない、っていうのがめっっっちゃいい。シンプルにうまい。

まあ殺さないけど傷つける、ていう可能性もあるわけだからナイフ持った犯人に近づかないほうが良いと思うよ私は。

 

あと、最後のどんでん返しが複数あってかなり好きだ。唯一完全にこの地区やサキミと関係の無い王寺がなぜそんなに予言に怯えていたのかとかサキミの正体、手紙や過去の真相…。手紙は叙述トリックで楽しかった。叙述トリック大好き人間。十色勤お前のせいや全部何しとんねん。

 

総評:

最初も言ったけど前作よりかなーーり好き!ゾンビってやっぱりミステリに入れるには抵抗感それなりにあったんだなって改めて思ったのと、いらない部分が明らかに少なくなってたことが大きい。まあ言ってしまえば前作は明智がまずいらないと言えばいらなかったし…。

今回の予知能力はちょうどいい匙具合だったな。全部が全部理論で説明できるのももちろん良いんだけど個人的に少しのオカルト風味とか超自然的な要素を含むのは結構好き。『暗黒館の殺人』の不老不死要素とか、アナザーもそういう要素含むね(どちらも綾辻行人さん)。理論で解明していくミステリの中にそういうスパイスがあるとめちゃめちゃ楽しいし、なんだか人智の及ばぬものも否定はできないなって感じて奥行きのある作品になる気がする。あそこで起こったことは確かに人のやったことで、謎解いて犯人も暴いたけどそれとは別に解明できてないこともあって、あの能力は、あそこにいた人たちはなんだったんだろう…ってあとで幻を思い返すような。今となっては記憶しかその出来事が確かにあったと証明出来るものが無い…次同じ場所に行ってもそこには何も無くて…みたいな…夏休みに知り合いの別荘に行ってそこで出会った不思議な人…一夏の恋…または千と千尋の神隠しみたいな…アリエッティみたいな…(うろ覚え)  暗黒館読みてえ~~~!!!!!

「謎があります!推理します!解けました!」だけでもミステリってできるんだけどそこに物語があるのが一番求めているものだなあ。

というか王寺の女疑惑の話は伏線じゃなかったんかい・・・面白くするためのスパイスか…